第五十三回 大吉報

2021  11/12  

 

この度、極めて重要で特別な結婚が実現した。

この結婚に際し、私の古い思いによる一段、二段のブースターロケットでせり上

がっていた謎機体の三段目が御二人により遂に点火した。

ご結婚おめでとうございます。

心より、御二人の幸せを私にお分け下さい。

既に頂いております分は、それはそれ。

 


かつて、一段目・・・

昔、私、好きな女、居た。
結婚したいが、どうしてもしてくんね。
別れたり戻ったり、長い長い時間共に過ごすも結局してくんね。
歪んだ歪んだ、私、歪んだ。
不必要な矯正を長時間大きく自らで施し、心歪んだ。
弱き者が歪みを得て持て余す。  醜悪か滑稽か選べね。

 


かつて、、二段目・・・・

五人居る幼馴染の中の一人、この男は中々にモテる。
しょっちゅう彼女が変わるし長続きもしない。
しかし、ある女との付き合いが始まり、長続きする。
別れたり戻ったりしながらも物凄く長い時間付き合い続けている。

私は気が気ではない。
身に覚えがあるこのパターン。
最早彼らは私が経験したノラリクラリ時間を越えて今に至っている。

私はこのカップリングが大好きだった。
幼馴染である男はこの女の影響で随分変わった。 無論良い方に。
女の方は万人受けとは程遠いクセの強い性格だが、超善人でべらぼうに頭がキレ
る。  いつの頃からか私は、何としてもこの二人に結婚して欲しくなった。

時は流れ・・・遂に二人は結婚した。

私を含め三人の幼馴染が式へ向かう。
私はかつての自分が果たせなかったハッピーエンドを目の当たりにして、その式
場で最も嗚咽し震え、最も多くの涙を流し、最も多くの注目を集めた来賓となっ
た。
石垣島の教会の床が塩辛いのはあの日私が泣きすぎたからだ。

新郎側の猛者共は私の奇行をある程度見てきた口なので、
「またアイツおかしな事になっとるで。」 と半笑いで生温かく見てくれたのだ
が、事情も素性も知らぬ新婦側諸兄からの不審者、冒涜者を見るような針視線は
今思い出しても痛々しい。

「何ゆえあそこまで感情を露にするのか」
「新婦の元恋人、或いは密かに思いを寄せていた者か」

まさか叶わなかった己の結婚を勝手に置換し、遂に果された夢に泣き崩れるとい
う高度な変態プレイを神聖なイベント中に強行しているなどと誰が考え、受け入
れようか。

後で新婦が上手い事フォローしようとしてくれたのだが、なかなかに大変だった
そうで申し訳無い。

しかし、違った。  違っていたのだ。
結局私は自身の果たせなかった夢を置き換えて泣いていたのでは無い。
真に祝福され、遂に結ばれた本物の縁を目の当たりにして、絶望し、崩れ落ちた
だけなのだ。
私の、私自身の真心など、運命や縁にかかれば通らぬ無理への体当たりに過ぎ
ぬ。
愚行によって曇った眼ではいよいよ己の運命や縁が見えず、自らが愚かな道化へ
と化してゆく。
私は頑なに、自らが、道を踏み外していったのだ。

 

そしてまた、時は流れて・・・・・
ここに待望の男女が結ばれた。
私はこのツーショットが大好きだ。
夢のようにお似合いだからだ。

先の幼馴染夫婦はよくよく知った上でとてもお似合いだ。
此度のお二人の事は殆ど知らないが、極めて理想的で美しい。
美しいは正義だ。
初めてお二人が恋仲だと知った時の胸の高鳴りは今も忘れえぬ。

しかもこの二人、単に美しい男女が絵になる、というだけでは無い。
物言わずともこの二人がセットで視界に入ると物語が聞こえてくるのだ。

禁断の森の姫君と世界中を旅して回る伝説の吟遊詩人が風と雲に導かれ、運命は
二つの魂に恋を命じた。

いよいよどうなるかという時もあったが、祝福されし運命は想いを超えて二人を
決して離しはしないのだ。

二人から溢れ出る半端ないアダムとイヴ感。
時代時代に於いて、幾組かのアダムとイヴが現れ、見る者を幸せにする。
そんな貴重な一組が今我々の前で結ばれた。


美しい出来事だ。
何の関係も無い私が浄化されるのを感じる。
長い年月をかけて実らせる美しい奇跡。

 

予期せぬ吉報に喜びと、何よりもホッとしました。
何にせよ二人が引っ付いてさえいればそれで良いのですが、やはり結婚していた
だきたかった。   これは大きい。
普段はお二人から楽しさや幸せな気分、感動を頂戴していますが、此度のご結婚
からはお二人より希望を勝手に頂戴します。
誠に有り難いです。

あと、これはもう、本当に、もし良ければの話なのですが・・・
新婦本人直型取りの頭部石膏像を頂ければ、私、すごく飾ると思います。

どうか末永くお幸せに。   ホンマ嬉しい!