第一回 ギブソン及び音楽とギター連合王国

2018 8/3  

先日、長年必死で避けてきた地雷をとうとう踏んでしまった。
かなり酔っていたせいもあるが、迂闊にも程がある。
手ぶらでお邪魔したセッションの場ですぅっと手渡されたテレキャスター
「あっ!・・・」
と思いながらも受け取ってしまい、そのまま夢の様なテレキャスター初体験を経
験させて頂きました。

そう、多くのギブソン好きにとって最大の脅威であるフェンダーテレキャス
ー。
我々ギブソン信奉者は世間様が 「サンバーストのレスポール」 なんかをつか
まえては、これを 「キングオブエレクトリックギター」 と評して下さる度に
ありがたい反面、真のエレキングテレキャスターなんやけどな・・・と思いつ
つ黙り込んでしまう。

アコースティックギターやアーチトップギターなら、戦前のD-45を出されよう
が本人物のディアンジェリコを出されようが、一瞬、かなり興奮はすれどもやは
ギブソンがいいな、って思う我々狂信者ですら、あの板切れに回路盤を貼り付
けたレオの魔導器を超えるソリッドボデーエレキギターが、ギブソンはおろか、
世界中の何処にも無い事を知っている。
故に手出し無用!  だったのに・・・。

いい機会ですからね、音楽体験を中心に私とギター、と言うより私とギブソン
ついて書かせていただきたく存じます。

 

10才の時に父親の影響でスパイロジャイラと高中正義にハマる一方、父親のウ
ルトラヘーバレットであるビートルズは全く理解できませんでした。

ゲームセンターと家庭用TVゲーム、宇宙戦艦ヤマト機動戦士ガンダムが人生
の全てだった10才の頃、超かいらしーおとこの子が高っかい声で友人たちとゲ
ームにおいて、BGMがいかに大事であるかをキンキン声で議論していた。
そんな折に上記二つに出会い衝撃を受けます。
母親がガチの映画好きで幼少の頃から様々なサウンドトラックや、これも母親の
趣味のハービーマンやパーシーフェイス等々を聞いていたので歌の無いレコード
の存在は知っていました。

しかし、いわゆるインストゥメンタルを知らなかった私は、初めてスパイロジャ
イラを聞いた時に 「ゲームの音楽をピコピコや無いもんでやっとる!」 とな
りましたし、初めての高中正義は歪んだエレキギターの音が新鮮且つカッコ良す
ぎて一気にハマりました。

後に28才の時にガチガチにハマってしまうYMOを当時知っていたら、きっと
少年の人生は変わっていたのでしょうね。
まぁ、実は幼少の頃ゲーセンで 「スーパーロコモーティブ」 っていうゲーム
のBGMがライディーンだったのですが、当時の私は 「やっぱセガ超クール!
このBGMやべぇ」
と喜んだものの、まさにゲーム脳真っ最中のボクちゃんが本家YMOに辿り着く
事は無かったのでございます。

時は流れ12才のある夜、父親から何の流れからか、 「面白い歌がある」 と
いう話になり、「ビンビンだぜ」「へへいベイビー」 なる歌詩であると言う。
異常に、異常なまでに興味を引かれた私。
そこで当時、家が喫茶店をやっていたので有線放送にリクエストしよう、という
事になりました。
何せ題名を知らないものですから父親が電話口でユーセンの女性オペレーターに
向かって 「ビンビン」「ヘヘいベイビー」 等を連呼して説明する勇姿には親
の子に対する強い愛を感じましたね。
そして美人オペレーターから曲名と演奏者の情報を聞き出してくれ、私は興奮で
ブルっぶるに震える手でアールシーサクセーションとメモを取りました。
そしてその夜は合計で3回程 「雨上がりの夜空に」 をリクエストしたと思い
ます。  いやー、大盛り上がりでしたね。
友人と天王寺へ赴き、雨上がりが入ったレコードを買いに行き、ラプソディを購
入。
ジャケットの写真が怖過ぎてイヤでしたが、エレキの音に痺れあがります。
しかもライブ盤。
ライブ盤の存在すら知らなかったので、これも運命的な良い出会いだと思います。

しかしメインストリームは相変わらずゲーセンとファミコン及びプラモ、更に覚
えたてのF1とル・マン。  それはもう充実しきった毎日。
ギターなんてものが自分には弾けるはずが無いし、そもそもあんなでっかい音が
出る物体、ありえない。

私はエレキギターの仕組みもアンプの存在も知りませんし、楽器と言えばリコー
ダーやカスタネット、トライアングルくらいしか知りませんから楽器にボリュー
ムが付いている、という発想もありません。
ですから、エレキギターはギターから出ている電源コードをコンセントに繋いだ
が最後、常にあの大きい音しか出ないものと思ってましたし、音色も歪んだ、グ
ワァーとかキュイーンしか出ない。そういうヤバいものだと思っていました。
プロの為の飛び道具、という感じですね。
そんな物をまさか家で鳴らせるはずは無いし、そもそも普通には売ってないであ
ろうと、仮に売ってても子供が自動車を買うようなもので・・・何となく漠然と
そんな感じでした。

ところが14才ともなりますとエレキの知識は変わらずとも世の中には大衆向け
で音が小さいギター、そうアコゥースティックギターなるものがあることを知り
ます。
多様多彩なアコギの世界も当時の私にはたった二つしかありません。
弦のやらかい のと かたい の。
考えるまでもありません。質屋の軒先に吊るされた8000円のやらかい方を父
親が7000円に値切り、オマケで粗悪なカポタストYAMAHAのおにぎりピッ
ク、更にコードブックまで付けさせるという極悪カスタマーぶりを見せつけ、私
にプレゼントしてくれました。

嬉しくて嬉しくて、それはもうずーーーっと弾いてましたね。
プン、プーンって音が出るだけで死ぬほど興奮してました。
なーんにも考えず最初の一年位は左手の中指と右親指だけでプンプン プンプン
鳴らして遊んでましたね。
ほんの少し経験者の父親に 「コードは覚えへんのか?」 と言われましたが音
楽は好きでも完全に無知だった私にはコードなど興味も無く、必要性も全く感じ
なかったのでひたすら左中指と右親指でプンプンしてました。

せっかく父親が質屋から引きずり出してくれたコードブックも見るのは好きでし
たが、それを弾こう、弾きたいなんて事は思いませんでした。
ピックも弾きにくいし、ギター中心部の丸い穴からギター内部へピックを頻繁に
落としてしまい、その救出作業の煩わしさと、弾く事でピックが減るのが嫌なの
で大切にしまっておきました。
カポに関してはまず意味が全く解からないし、言うまでも無くコードを知らず、
弾こうともしない人間にとっては、指板と言う名の遊び場を狭くするだけの害悪
でしかないので、そのうち無くなりました。
父親は 「えー、無くしたんかいな。有ったら色々出来るのに。」 と言ってい
ましたが、上から下まで一直線に押さえる程度の事、ワテの左中指でいつでも出
来まっせ、と思っていました。
因みに7000円のクロサワのクラギも今は無いが、aTNのコードブックとYAMA
HAのおにぎりピックは今も手元にあります。

そうやってひたすら左中指と右親指でプンプン鳴らして、何の疑いも無く真剣に
自分は一生ギターを弾き続けるに違いない。
まぁ大人になる頃にはもしかしたら左中指以外も使うかも、と思っていました。
しかしまぁ、極々たまーーーに楽しい図像本であるコードブックに本来の光を当
て、右手で左指を無理やり指板の各定位置に配置してボローンと鳴らしたりもし
てました。
そんなおイタを繰り返しているうちに事件が起こります。

蕩けるような左中指と右親指の蜜月のプンプンタイムに時々左薬指が分け入って
きだします。
不本意ながらも、予期せぬ開闢にアレ? これはもしかしてエラい事になるんち
ゃうか? もしかしたら何らかの曲を弾く、いわゆるギターの演奏というものが
遠い未来、自分にも出来るのではないか? と。
そんなこんなで蜜月タイムもすっかり三指定着となり淫猥さが増し、更にあろう
事か左人差し指までが毎回のようにふすま越しに三指の蜜月を覗き見する有り様

まぁ、好きにせい。と思っていた頃に 「ザ・タイマーズ」 というアルバムが
発売されます。


買って、聞いて、驚きます。
あれ? なにこれ?? RCはラプソディとキングオブライブ、オンタイムでレ
ザーシャープとマービー、カバーズしか知らないし、他の手持ちのLPは全てゲ
ームミュージック(この時分からビデオゲームのBGMをゲームミュージック
て言い始めたんスよ)という有り様。そして私の愛器はナイロン弦。

当時の私は鉄弦アコギの音がよく解からなかったのです。
フォークやカントリー、勿論ブルースも含めまともに聞いた事が無いし、ポップ
スの伴奏で必ず耳にしている筈だが何にも引っかからなかった私にはこのギター
の音の正体が気になって気になって仕方ありませんでした。

そんなある日、友人が 「例の夜ヒット」 を録画したので今日の放課後みんな
で見ようという事になりました。
その友人はニヤニヤして一刻も早く見せたいというご様子。
彼以外は私含め全員が放送を生で見ていませんので、まさかその数時間後、精通
したての中学生男子共が狂乱する事になるなどとは誰一人として予想出来ません
でした。

時は来て、無論私も件の四文字に身をくねらせ、変な格好、丸いサングラス、清
志郎以外全員誰なんだ!? 等々頭の中がグワングワンしましたが、一方で初め
て見るギター郡に強い衝撃を受けました。
「何じゃこのギターは!?!?」

まずデカい、デカすぎる。
んで清志郎の持っている巨大な瓢箪のようなギターは一体?? そもそもギター
なのか?
当時名も知らぬ三宅さんのギターは逆にくびれが殆ど無く長方形のような胴部。
両者の指板の特定の位置が反射素材でギラギラ光る。
しかも何か出る音がエレキっぽいというか、変な音。
そしてお二人とも大人やのに抱え込むように弾いてらっしゃって、とにかくデカ
いな!!
というのが一番の印象でした。
あとはアコギやのに何で肩から提げてんの?・・・と待てよ、ワイも愛器を肩か
ら提げたらどうなんねんやろ、とかなんとか。

そうこうしている内に人生の分かれ道が来ます。
何度も何度も繰り返し見ながらみんなでワイワイ言いつつも、次第に清志郎の持
つ瓢箪楽器ばかりが気になり始めます。
一秒ごと、確実にそれは私の心を奪い続け、目から入る情報を脳は弦楽器、瓢箪
と認識せずもっと大切で愛しい何か、という仮の形で認識し、それを心の深くて
重要な場所にそっと置きました。

さて、よく笑ったしそろそろ解散、という頃にはもうすっかり自分が恋に落ちて
いる事にハッキリと気付いていたので、何とぞ一晩だけでも! と、友人を拝み
倒してそのVHSテープを借り受けます。
真っ赤に染まる夕焼けの中を帰宅し、直ぐに見まくりました。
そして、ギターの頭の部分に書いてある何らかの文字を解読せんと、一時停止、
スロー、早送り、巻き戻しを繰り返し、人様の大事なテープにメーカーの耐久テ
ストのようなダメージを与え、次の日返却しました。
結局文字は読めなかったのですが、ギターの全体像と特徴、頭の字の位置や斜め
具合、その下のマークらしきものを紙に書きとめました。

 

            ~~~楽器店~~~
・一般人が用も無く立ち入れない場所。
・楽器を所有していても演奏者で無ければ行っても意味の無い場所。
・厳重に管理された無数の楽器達。極一部の人間を除いてヒトが楽器を選ぶ事は
 出来ない。 楽器がヒトを選ぶ悪魔の武器庫。
・ガラス貼りの店舗が多く、入店を許されない我々下々の者にも外から見える範
 囲で中の楽器を見せ、寛大さを示した上で見た者に畏怖の念を抱かせる政治的
 手腕。
ドレスコード=長髪 黒い衣服。
・当時の私が間違っても足を踏み入れる事がない場所・・・

しかし、あろう事かこの若さでどうしても危険を冒し、かの聖地の扉をこじ開け
ねばならぬ時が来た。
言葉で言い表せぬ官能的瓢箪のいい感じの何か。
それの正体、とにかく何でもいいからアレに関する情報が欲しかった。
せめてお名前だけでも!!
息を整え、重いガラスドアをグイと押すか引くかして店内へ。
ブワっ!! ものっ凄くいい匂いがする。 あー、ここ、俺、大好きや~

ゲーセン、TVゲーム屋、本屋、プラモ屋、レコード屋
今まで自分が好きになった店舗施設とは一味違う、そうですね、まだ模型店が一
番近いかもですが、ここに出入り出来る人間になりたい!って思いましたね。
ここに用事のある人間になりたい、と。
無数に安置されている楽器たちの気配をビンビン感じながら、目を合わさないよ
う気を付て奥へ。
店員さんに話しかけ、チラシの裏に書いた「瓢箪」に関するメモを見せて情報を
探る。

店員 「うーん? 何やろなこれ?」 
私  「TVで見た。」「忌野清志郎が・・・。」「こう、肩から提げて
て・・・。」
色々説明するも、なかなかピンっと来てくれない。
やっぱこれじゃ解からんかー。
かなり焦りながら身振り手振りで 「こう、抱えるようにですね・・・」 とか
説明していたら、奥からもう一人店員さんが出て来ました。

「これ、何かわかる?」先の店員さんにメモを渡された後店員さん、数秒見た後
「ジャンボやろ、これ。ジャンボやジャンボ。多分ジャンボで間違いないわ。」

「ジ、ジャンボ、ですか?・・・」私のイトシイシトの名前がジャンボ?
いや、確かにデカいけど・・・ダサいっていうか、ボーイングっていうか、
そのままやん! っていう・・・。

「そうそう。ジャンボっていうギターがあんねん。写真見したるわ。」  
奥の事務倉庫のような所から持ってきてくれたスクラップブックを指差し
「これやろ? な?」

わぁぁぁぁ、これですぅ。 すごいですぅ。
やったなー俺、まさかこんなにすぐに一気に解決するなんて。
テンションが上がります。
「あの、このジャンボについて色々全部教えて下さい。」

若い時はこれくらい図々しく遠慮が無くて良い。
麗しの君の製造メーカーの名はギブソンといい、J-200っていうモデルのギ
ターだそうな。
この時、深くて重要な場所に仮置きされていた大切で愛しい何かは「ギブソン
-200」という名前でそこに正式に置かれ、今もずっとそこにあります。


さて一気に解決した興奮で頭に血が上っています。
その勢いで店内の楽器を見て回りましょう。

「ほらこれ、この辺が全部ギブソン。あっちにもちょっとだけあるよ。」ギブソ
ンが何なのか全く解かっていない中学生に店員さんが丁寧な説明と案内をしてく
れます。 因みにJはジャンボのJ。 へー。

残念ながらそのお店にJ-200は無かったのですが、その後何年もアホみたい
に通いつめ、その都度見まくったギブソン郡との初めての出会いでした。

そしてその後の数十分か一時間かは衝撃の連続。
エレキの正体、アコギの世界、アンプの存在、海外楽器メーカーの事等々、知識
の奔流に脳をバラバラにされました。まさに、「ええーー!?」 の連続です。
店員さんがエレキを目の前で鳴らしてくれて

「ほら、テレビのボリュームと一緒やで。はいこれ、触ったら解かるから。」
ひゃー、まじかー。
「で、電気ビリビリ来ませんかね?」
ベタやけど当時の私には大真面目の疑問です。
超びびりながらエレキ初体験! うひょー!・・・ってあれ?
弦もネックもコントロールのツマミも、とにかくどこを触っても冷たくて硬い。
音がどうとか言う前にこれって楽器なんか?

そのあまりの触り心地の悪さに驚き、国産?ヤマハ? もう覚えてませんが謎の
初エレキをすぐに返してしまいます。
さすがに唯の一曲も弾けず、コードも押さえられない者にエレキは早すぎたの
だ!!  何ぼなんでも。

自分の愛器の説明をしてヤマハのナイロン弦を買い、フェンダーUSAとヤマハ
のカタログを頂戴してその日は家に帰りました。
ギブソンのカタログは今は無く、価格表やったらあるとの事でしたが貰いません
でした。


大好きなギブソンのアルバム、「ザ・タイマーズ」。
ずーーーっと聞いている内に天才は閃きます。
「あっ!! これエレキやないから、ワシの愛器と一緒や。・・・という事はワ
 シの愛器で一緒に弾いたらスゴイ事になる!」
「ワシの愛器がギブソンになる!!!」

元々、ラプソディとレザーシャープをかけながらプンプンしていた時期があった
のですが、あまりにかけ離れたサウンドに嫌気が差し、かけながら弾くのは止め
ていました。
しかし今回はアコギとアコギ。 これは世紀の発見や!
という事で早速実行です。
そして、やっと、ここに来てコードに目覚めます。

が、かの図像本、コードブックから適当なコードを選び出し、弾いてはレコード
と答え合わせをする作業が非常にキツい。
正解して憶えたとて、コードチェンジが亜光速に近くて笑うしかない。
例の「夜ヒット」もダビングさせてもらったので清志朗がどういう風に弾いてる
のかを一生懸命見ますが、画質の問題もあってかどう押さえているのか、何をし
ているのかイマイチよく解かりません。 う~ん。

そんなある日、これまた父親から 「スコア」「ピース」 なるものがあるとの
情報を受け、心斎橋のヤマハへ。
しかし空振りに終わります。
クラシックやフォーク等、所謂名曲と言われるものしか「スコア」になっていな
いのかな?
折角なので店内のバイオリンや金管楽器の刺激にズボンの下で勃起し、ハァハァ
してから店を後にしました。

とりあえず、コードを覚えて、押さえれる練習を事務的にやっていたある日、記
憶は定かではないですが恐らくドラクエⅢ辺りのCDを買いに、行きつけの小さ
レコード屋に行った時、それはありました。

バンドスコア。
ページをめくると其処には全てのコードが丸見えになって、いやらしい顔をした
曲たちが完全収録されたエロ本。
これでワイも今日からタイマーズ
必死で練習しますがビビる位にコードが押さえられません。
しかも折角押さえたコードをすぐに放棄して次のコードを求める。
どんだけ欲しがるねん!!  必要なのか? サッサッサっとチェンジ出来る所
を見せてカッコよさを演出する、ロック的なアレか?
ホンマはずーっと Cとかでいけるんやろ? まぁ・・・あともうチョットは要
るかもやけど。
当たり前ですがワンコードでは上手くいきません。
何種類かのコードを押さえられてもチェンジが全く出来ません。

今思い出しても寒気がする位、雑に雑に、それはもう粗雑に。
無理矢理一曲通しで弾けるようになって、そのうちパワーコードである程度カタ
がつく事を知り、「ザ・タイマーズ」以外のアルバムとも再び一緒に遊んでもら
います。

そして時は流れ、ワッシュバーンの中古のトリプルオー風か、ヤマハの新品CJ
-12か死ぬ程迷ったあげくワッシュバーンを引っぱり、指の骨が折れそうな鉄
弦に泣きながらも充実のギターライフを送ります。
そして高校一年で軽音楽部に入部し初顔合わせで部室へ。
新入部員は5人、うち4人は中学からの友達らしく、ボウイをやる為に軽音に入ったガチ勢。
あとの一人がワタクシ。
おお! けいおんってバンド組んでから入らなアカンかったんか! エライこっ
ちゃ。
・・・と思ったが、先輩の一人が、
「一年の初っ端から出来上がって軽音に入ってくる方が珍しい、スゴイな君
 ら。」と言って、私にも
「全然気にせんでエエわ。」と言ってくれたのでホッとしました。

そもそも私がK-ON! に入った理由は禁断のエレキを買い、そいつを部室で
ドライビンさせたいだけの話で、バンドとかには興味が無かったし、同年代にお
けるRCや清志朗の認知度の極端な低さは身を持ってわかっていたので、バンド
をやりたいのならイカ天系をやるしかない、と思ってましたし事実そうでした。

2年生のバンドが2つ位あってパーソンズとかジッタリンジンをやってたと記憶
しております。
が、一つしか無い3年生バンドは違いました。ガンズンローズィズ、エアロスミ
ス、レッドゼプリンのコピー、とオリジナルをやるバンドでした。

で、先の初顔合わせで先にその3年生バンドが部室に居たのですが、ひと通り紹
介等が終わった後、
「じゃあちょっと僕らやってみるから見てて」と言って始まったのがガンズのナ
イトレインでした。
ガンズはおろか、エアロもZEPも知らない私はそのあまりのカッコよさに震え
上がりました。
まだロックコンサートに行ったことも無く、生のバンド演奏と言えば遊園地や何
らかのイベントでタダで見れるアレしか知らなかったのですが、3年生バンドを
初めて見たあの時、今迄感じた事の無い切れ味とか重さに体も心も震え、自分の
今の感情が何なのかよくわからないまま必死で涙をこらえました。

続いてミスターブラウンストーンをやり終わった後、リードギターの先輩が振り
向きざまに私を見て
「もうギターは持ってんの?」と聞いてくれました。
私は、持ってはいるがアコギしか無いしエレキに関しては殆ど無知である。が、
非常に興味はあるという事を伝えました。
その先輩は、じゃあちょっと弾いてみなさいと自分のギターを肩から降ろして私
の方へ差し出してくれました。

受け取ったその真っ白けのエレキはズッシリ重く、座って膝の上に置いても先ず
重い。
しかし何とも手触りが良く、暖かくしなやかで、以前に楽器屋で生まれて初めて
触ったエレキとは随分印象が違いました。
ふとヘッド部に目をやると見慣れたあの「Gibson」なる文字列が刻印され
ています。
漫画みたいに目の玉が飛び出しそうになりながら私は
「??? え? これギブソンなんですか?」完全に動揺している私。
「そうギブソンレスポールカスタムやね。」
もう意味がわかりません。ギブソン? 高校生がギブソンを?? レンタルか?
この部に代々伝わる秘宝か?

かの楽器屋は現行USAは全て取り寄せ。
店頭在庫ギブソンは中古とビンテージオンリーです。
大体100~300万(本物の58、59、60はじめ、黄金期ゴロゴロ。あの
時買っておけば今頃俺は・・・)を筆頭にどんだけ安くても30万位はするアブ
ナイやつばかり。
現行品が全く安く無い事も知っている。
なのに何でこんなアホ高校の一部員が振り回しているのか。
そして定年後に退職金で買うはずだったギブソンを知らずに生まれて初めて触り
、今! 私の膝の上で佇んでいる。
これは・・・一体どういう事なんだ・・・?


ジーーーーーっと見惚れている私に、先輩が手元の黒いスピードノブをぐるりと
回してボリュームが全開に。 「はい、音出して。」
カチカチの体を制御して5、6弦でAやったかGのパワーコードをヒットする。

その時の感覚は恐らく一生忘れません。
ビビビビビーっと体中に電気が走ったような感じがして脳天が一発でショートし
ました。
アカン! 何なんやこれは、 これはアカン奴や。
これが、これが・・・ギブソンなんか・・・
この事件が、ギブソン社への生涯の忠誠と信仰の対象となる発端となったと言え
ば大袈裟か。
否、私には十分過ぎた。
初めて触れて、一回弾いて、契りを交わしてしまえばもう歯止めが利かない。

取り敢えずヤマハの白いストラト風中古エレキ(二万円)とダイナのヘッドホン
アンプを買い、ギブソンレスポールを買う日の為にエレキ慣れとイメージトレー
ニングに励む日々。

途中、厚生年金会館大ホールで見たRCサクセション(3人のやつ)で、チャボ
が使っていた黒いストラトキャスターが欲しくなり、ツアーパンフレットと3階
席からガン見した記憶を頼りに、黒ボデーでメープルネック、ストリングガイド
が丸くてマイクがつるんっとしたやつ、を調べてたらフェンダージャパンからク
リソツなのが出ていたので頑張って買いました。

チャボ本人はフェンダーUSAか何かの高いエエやつ、をお使いあそばしている
と思い込んでいました。
後年、なんとチャボの黒ストラトもフェンジャパである事が判明し飛び上がりま
した。
チャボはその後直ぐに本家USAの黒いクラプトンモデルを入手され、大層気に
入られ、ソレをずーっとお使いあそばします。
たまーに件のフェンジャパストラトをライブで使用され、特にマイロックンロー
ルでの最後の長時間スライドタイムで炸裂するその音色を聞いた時は全身が総毛
立ちました。
ミュージシャンが、あそこではコレ、ここではコレ、を使い分ける意味を何とな
ーくしか感じなかった私が極めて強烈にその意味を勝手に感じた一幕でした。


白いヤマハエレキがあまりにもヒドかったとはいえ、いきなりギブソンの怨敵で
あるF社の、それもよく出来た紛い物を買うという暴挙に出てしまったのですが
、実際フジゲン製のこの黒いストラトキャスターは素晴しいです。
Vネックはめちゃくちゃ引きやすいですし、枯れた風、あくまで風、かも知れな
い。が、このゴールデンレースセンサーPUの音も私を夢中にさせました。

ギブソンの紛い物であるトーカイ、グレコやバーニー、ギボン、ギブソネ、ギブ
ソーン、ギャバン、ギャラン、ギャンソン、ギブリオン等を何故買わなかったの
かと思われるかも知れない。
しかもタイムリーな事に丁度その頃に 「オービル」 が鳴り物入りでデビュー
したりもしました。
今となってはどれも欲しいです。
特にトーカイは今もそうですが、当時でも一部のギブソンレプリカが非常に
”良い” 且つ入手困難で、私の好きな裏楽器屋界隈ではちょくちょく話題になって
ました。
オービルも、初期のカスタムは凄い気になります。
ていうか我らの神であるオービル・ヘンリー・ギブソンファーストネームをあ
しらったギターって!! すごい。
G&Lやミュージックマンはあれど、ヘッドにレオって書いてるテレキャスター
無いし!

でもまぁ当時買わなかったのは、自分の中で最高峰と決め付けちゃってる憧れの
ギブソンを必ず買う日が来るので、まったく興味も関心も無かったです。
勿体無いです。
初期もののオービル、何でもいいから買っておけば良かったです。

そして、高校二年生の夏休みにアルバイトで得た金でギブソンを買いました。


折角?なので自慢のギブソン遍歴を紹介させていただきとう存知ます。

買った順に、
レスポールクラシック 91
レスポールカスタム 70
レスポールJr 60
レスポールカスタム 68
SJ-200 98
レスポールカスタム 55
ES-335 68
レスポールスペシャル 61
レスポールリイシュー 89
ES-175 59
Lー6S改 78
ES-175D 95
レスポールスタンダード 80
J-50 68
レスポールリイシュー 06
レスポールリイシュー 06
・・・愛しています、心から・・・。

しかし、レスポールを何本も買うくらいならスーパー400にサイテーション、
L-5やF-5といったギブソンが威信をかけた世界遺産を頑張って所有するべきだ
と思います。
何故こんなにレスポールの事が好きになったのかは色々あるのですが、スーパー
400についてだけは買わないのに異常な執着が昔も今もあります。

私はギターが好きだし、弾くのも本当に楽しいです。
文化祭やバンドの助っ人で演奏した事はありますが、自前のバンドで人前で演奏
した事がありませんし、弾き語りには興味すらありません。
ですから上手くならないのでしょうが、ギターとその演奏へのモチベーションを
保つのにそれらは必須では無いので執着しません。

しかし、仮にギブソンの所有及び使用を取り締まる法律が出来たなら私はギター
を弾かなくなるような気がします。
ギブソンを膝の上に乗せたり、ストラップで吊り下げて見下ろした先にある情景
は他のギターや楽器では得られない特別なものです。
この時点で7割満足です。
勿論その音色も最も好きです。
自分で弾いていて高確率で寝てしまう175。
管楽器の音がするレスポール
バーブトレモロ要らずのビンテージギブソン
捻り音、軋み音。弓を思わせる強烈な音が出るギブソンアコースティック。
私にとってかけがえのないギター音ですし、自分にとってのいい音、の基準にし
てしまっています。

 

グラナダを頂点に、バンジョーマンドリン、ギター、ベース、アンプ等々等々
広大なギブソンワールドのほんの一部だけを見聞きし、体験しただけですが、間
違いなく人生を豊かで幸せなものにしてくれたギブソンに心からの感謝をここに
表します。